確定申告と保険料、後期高齢医療制度の自己負担額との関係

Q. 私は、源泉徴収ありの特定口座で上場株式の譲渡を行っているのですが、昨年は譲渡損失が100万円出てしまったので確定申告で譲渡損失繰越の申告をしました。今年は譲渡利益が150万円出たので、損失の繰越控除制度を利用して昨年の損失と通算することで所得税還付を受けたいと考えておりますが、留意することはありますか?

 

A. 上場株式の譲渡所得や配当所得は、「源泉徴収あり」を選択した特定口座では、すでに所得税・住民税が徴収されているため確定申告をする必要はありませんが、ご質問のような場合には、申告をすることにより税負担を少なくすることが出来る場合があります。

ただし、確定申告をすることにより、下記の保険料等が増える可能性があり、最終負担額が増えてしまうこともありますので、総合的に検討する必要があります。

 

①国民健康保険料、後期高齢者医療保険料

ご質問の場合は、

今年の譲渡利益150万円-昨年の譲渡損失繰越額100万円=譲渡所得50万円

になり利益が損失を上回っていますので、確定申告により保険料額が増えます。

逆に、利益が損失を下回る場合は保険料額に影響はありません。

 

②介護保険料

介護保険料の計算においては譲渡損失の繰越控除は対象になっていませんので、ご質問の場合には今年の譲渡利益150万円分の所得が増えることになり、保険料額が増える可能性があります。

 

③後期高齢者医療制度の負担割合

後期高齢者医療制度の特徴は、医療費の窓口負担が1割と低くなっていることですが、確定申告により現役並み所得があるとされると、窓口負担が3割になります。現役並み所得と判定される基準は、簡単に言うと住民税の課税所得が145万円以上あることですから、ご質問のように譲渡利益が損失を上回る場合には注意が必要です。

 

①~③は、住民税の所得金額が計算の基準にされていますので、確定申告をすることでこれらの負担が増えてしまうケースがあるわけです。

 

そこで、住民税の申告不要制度を選択する旨の住民税の申告を市区町村に提出することも検討すると良いでしょう。これにより、譲渡損失の繰越控除制度の所得税還付申告を行いつつ、市区町村民税の納税通知書が送達される前までに住民税の申告不要制度を選択する旨の申告書を提出することにより、保険料等の増額対策を行うことも可能になります。

 

まずは一度当事務所までご相談ください。