中小企業の退職給付会計

2012年5月17日にASBJ(企業会計基準委員会)より
「退職給付に関する会計基準の適用指針」が公表されました。
IFRS(国際財務報告基準)への対応がまた一つ進んだことになります。

この「退職給付に関する会計基準の適用指針」の公表により、
まだ計上されていない退職給付債務が純資産の部にマイナス計上される為、
債務超過となる会社が出てくると思われます。

中小企業の場合ですが、IFRSの対象は上場企業の為、
現在は中小企業に影響がありません。

適用されるのも連結財務諸表の話で、個別財務諸表上の取り扱いは変わりません。
中小企業には、実際、退職給付費用が税務上の損金にはならないため、
税務に合わせた決算書を作る場合が多く、退職給付会計を適用していない会社も多いです。

 

では、退職給付会計は、中小企業は適用しなくてもよいのかということになりますが、
平成17年8月に公表された「中小企業の会計に関する指針」により、
「退職金規定がなくかつ退職金等の支払いに関する合意も存在しない場合には、
退職給付債務の計上は原則として不要である。ただし、退職金の支給実績があり、
将来においても支給する見込みが高く、その金額が合理的に見積もることが
できる場合には重要性がない場合を除き、引当金を計上する必要がある。」
(中小企業の会計に関する指針 56)とされています。
ですので、中小企業で退職金規定がなく、支給実績もない場合を除き、
重要性が乏しいといった場合以外は、退職給付債務を計上すべきであるということになります。

 

ただし、退職給付引当金を計上していない場合、一時に処理することにより、
財政状態、経営成績に影響を及ぼすことになるため、10年以内の一定の年数又は
従業員の平均残存勤務年数のいずれか短い年数にわたり定額法により
費用処理することができることとなっております。