調整対象固定資産について
課税売上割合が著しく変動した場合には、一定の固定資産について、仕入に係る消費税額を調整する。対象となる固定資産は、税抜100万円以上の少額でないものである。以下は、比例配分法における計算例である。
税込み210,000,000円のビルを購入した。このビルは一階をテナント(課税売上)として、残りの全ての階を住居用(非課税売上)として貸す予定である。
一年目は、テナントの一階部分が契約となり、住居用として賃貸に出していた二階部分のみ契約となった。
ビル購入時の課税売上 1,000,000円
ビル購入時の非課税売上 1,000,000円
このとき、課税売上割合は50%である。
そのため、210,000,000円のビルの消費税5,000,000円が還付された。
二年目は、住居用として賃貸に出していた部分に人が入居した。
そのため、非課税売上は下がり、課税売上割合は大きく下がった。
二年目の課税売上 1,000,000円
二年目の非課税売上 9,000,000円
このときの課税売上割合は、10%である。
三年目も、二年目と状況はかわなかった。
三年目の課税売上 1,000,000円
三年目の非課税売上 9,000,000円
よって、課税売上割合は、二年目と同じ、10%である。
このとき、税抜100万円以上の調整対象固定資産を購入している為、判定を行なわなければならない。
課税売上割合の変動差は、一年目の課税売上割合と通算課税売上割合を比較する。
通算課税売上割合は、3,000,000÷22,000,000で13.63%となる。
以下の判定を両方満たした場合、課税売上割合の著しい変動に該当する。
①変動差が5%以上である。変動差とは「仕入時の課税売上割合」と「通算課税売上割合」との差である。
50%-13.63%=36.37%で5%以上である。
②変動率が50%以上である。変動率とは、変動差を仕入時の課税売上割合で除したものである。
36.37%÷50% =72.74%で50%以上である。
①と②の両方の条件を満たす為、著しい変動に該当し、調整を行なわなければならない。
調整対象固定資産に含まれる消費税額は1,000万円。
実際に控除された金額は500万円。
通算課税売上から求められる、本来控除するべきだった金額は136.3万円
この差額500万-136.3万円の363.7万円を三年目に消費税の計算上、加算することになる。
なお、本来は国税部分のみで計算するものであるが、便宜上、地方消費税も含めた数字で計算している。
この三年目の判定を逃れる為に、今まで簡易課税届出、課税事業者不適用届を提出する方法があったが、これはH22年の改正により、提出ができなくなった。